『太陽からの風』『地球幼年期の終わり』『2001年宇宙の旅』『宇宙のランデヴー』など、数々の名作を残したSF作家、アーサー・C・クラークは、彼の作家的な円熟期にあたる1979年の『楽園の泉』で、宇宙エレベーターを描いた。地球の赤道上にある島からはるか宇宙に至る「塔」をつくりエレベーターを昇降させる。ロケットで宇宙に行くよりも画期的にコストが削減でき、人類は今とはまったく違う活動領域を手に入れる。

 アーサー・C・クラークは、科学的な考証に忠実な(その上で大風呂敷を広げる)いわゆるハードSFの開拓者であり大家だ。『楽園の泉』で彼が宇宙エレベーターを描いた時、すでに、理論的な後ろ盾はあったし、それが絵に描いた餅では終わらない技術的な可能性も見えかけていた。

 21世紀になって、我々と宇宙との関係は以前とは違うものになりつつある。ひとつ挙げるなら、国の主導ではなく民間宇宙開発が現実味を帯びてきた。今、国際宇宙ステーションへの補給業務は、アメリカの民間宇宙開発企業である、スペースX社、オービタルサイエンシズ社なども請負っている。近い将来、宇宙飛行士をステーションに送り届ける業務まで民間が行う。これは既定路線と言ってよいほどもはや現実的なことだ。さらにスペースX社は、今世紀前半のうちに火星に8万人を移住させる計画をぶちあげた。こういったことは、20世紀には想像しにくかった。

 では、『楽園の泉』から30年以上も経った現在、宇宙エレベーターの方はどうなっているのだろうか。実は日本は宇宙エレベーター大国らしく、アニメやマンガなどのサブカルチャーでは、このような構造物は非常によく出てくる。アニメではガンダム・シリーズ、コミックでは『まっすぐ天へ』『銃夢 Last Order』など、枚挙にいとまがない。実は『楽園の泉』よりもはるかに前に、小松左京が「果しなき流れの果に」(1965年!)の中で、宇宙エレベーターを登場させているのも特筆すべき事実かもしれない。それゆえ、物語の中では身近に感じている人も多いと思うのだが、それが今、どれほどの現実味を帯びているのだろう。

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