トーニャは、すでに40匹以上もの犬たちを飼っているのに、まだ犬が飼いたいようだった。

 ミッキー&ジュリーさんも、案外と簡単に、「今度、子犬が生まれたら、あげるわね」などと言っている。

 今いるトーニャのところの若い2匹も、この秋にミッキー&ジュリーさんのところからもらってきた犬だ。

 だから、もう十分でしょうと私などは思うのだけれど、トーニャときたら、「まだまだ、もっともっと」という顔をしていた。

「橇犬は、何匹いたっていいわよ。私はたくさんの犬たちに囲まれていたいの」

 そうトーニャは言うけれど、犬を飼うには、それ相応の経済力が必要だ。

 私は、大好きなことにただ突き進むトーニャとは反対に、1歩どころか百歩ほど引いて、冷静に考えていた。

 今のトーニャには、1匹でも増えたら大きな負担になる。

 子供が1人増えるようにお金がかかってしまうのだ。

 現に、犬たちに、ひもじくみじめな思いをさせないように、犬の食費や医療費は常に優先で、トーニャ自身は何1つ贅沢をしていない。

 着るものも古着を大切に着て、食生活も質素だ。

 質素も質素で、毎日の食生活は、湖で捕った魚が中心。

 野菜は夏に畑でとれたものを保存しておいたもの、その他は、大量注文してストックしている缶詰類だ。

 焼きたてのパンをつくると、たっぷりのバターを乗せて、パンだけで終わることも多い。

 この現代にして、トーニャと私は、開拓時代のような本当に貧しい食生活を送っていたのだ。

 そんな生活に、ほとんど私は不満を持っていないが、実は最近、切実に心配しなければならないことが出てきたのである。

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