第11回 ハイジで見た憧れのチーズ料理

 8人兄弟の7番目だったというデニーさん。3歳まで祖父母の家で育てられ、実家に戻っても物心ついた頃には上の兄弟はすでに働いていて家にいなかったというから、家族が揃う時間の大切さをより深く知っているのだろう。日本は学校も職場も遠いし、忙しいからなかなか一緒に食事ができないね、とデニーさんは少し寂しげに言う。

 「毎日食べるものではないけど、そのぶん食卓に出ると嬉しかったですね。日本の天ぷらのような感じでしょうか、日常食だけど少し特別感がある。ラクレットは家族の食卓を豊かにしてくれるんです」。いまは年に一度くらいしかスイスに帰れないというが、そのときは親や兄弟と食卓を囲み、近況を話しながらラクレットを食べるそうだ。

 「スイス料理で最初に名が上がるのはチーズ・フォンデュだと思いますが、あの料理はスイスにほど近いフランスのサヴォワ地方が発祥なんです。今ではどちらも同じくらいよく食べられているけれど、本当の意味でスイス人が自国の料理だと誇るのはラクレットかな」とデニーさん。

 おじいさんが作るラクレットを嬉しそうに眺めて待つハイジの姿は、時代が移り道具が発展しても変わらないスイスの家族の食卓を、そのままに映し出しているのだ。

シャレー スイス ミニ
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中川明紀(なかがわ あき)

講談社で書籍、隔月誌、週刊誌の編集に携わったのち、2013年よりライターとして活動をスタート。何事も経験がモットーで暇さえあれば国内外を歩いて回る。思い出の味はスリランカで現地の友人と出かけたピクニックのお弁当とおばあちゃんのお雑煮