第11回 ハイジで見た憧れのチーズ料理

 香りに誘われてフライングしそうになる私をデニスさんの言葉が抑える。スイスの子どもたちもそんな風に親に言われながら、チーズが溶けるのを待っているのだとデニーさんは笑う。

 「さあ、食べ頃だ」とデニーさんが茹でたジャガイモにトロトロのチーズをヘラから削るように落とし、ペッパーなどが入った専用スパイスをふりかけた。これで出来上がり。アニメの中同様、非常にシンプルだ。

 熱々のチーズは、クセはそれほどないものの深みがある。そして、その味わい深さがジャガイモの甘みと絶妙に絡み合う。ラクレットは食事の中ではメイン料理に位置するというが、サイドメニューになりがちなジャガイモを主役にしてしまうのはチーズの力なのか。「白ワインと食べるのが最高!」とデニーさんは言う。

 「スイスは昼食を一番大事にしています。昼食の時間になると子どもは学校から、大人も職場から家に帰ってきてみんなで食事をするんです。私もスイスにいた頃はそうでした。でもお昼は時間が限られるでしょう。短い時間の中で、ラクレットは手軽で食べやすいんです。それにみんなでグリルを囲むから会話も弾む。学校で起こったこととか、他愛のない話をして笑いながら食べるのがすごく楽しかった」

直径50センチほどのラクレットチーズ。家庭では食べやすい大きさにカットするが、パーティーでは半分にカットしたものを大型のグリルに乗せて溶かし、父親などパーティーのホストがみんなの皿に削り落としていく
牛乳からつくられるハードタイプのラクレットチーズ。味はマイルドでクセがない。ジャガイモはヘラで潰してからチーズをかけるとよく絡んで食べやすい