第11回 ハイジで見た憧れのチーズ料理

シャレー スイス ミニのオーナー、パッシュ・デニーさん。ラクレット発祥の地、ヴァレー州の北西に隣接するヴォー州レマン湖地方の出身で、日本人の奥様と1990年から日本で暮らす

 国土の4割が海抜1300mを超える山岳地帯であるスイスは、古くから放牧を中心とした山岳農業が中心で、チーズの生産も古代ローマ時代にはすでに行われていた。スイス南西部のヴァレー州を発祥の地とするラクレットは、山岳地帯で生活するハイジのような牧童たちが焚き火のそばに石を置いて表面のチーズをとかして食べたのがはじまりという、スイス人にとってごく身近な家庭料理なのだ。

 「昔はハイジのように暖炉などであぶっていたけれど、今は専用のラクレットグリルがあります。2人用や6人用、パーティー用など大きさや形もさまざまで、スイスの8割以上の家にはあるんじゃないかな」と、デニーさんは6人用グリルに電源を入れて、カットしたチーズを金属製のヘラに乗せる。

 「ラクレットチーズはこの料理専用に生産されているチーズです。でも作っている場所によって味は違います。牧草の種類で乳製品の味は変わりますからね。だから、スイスには乳製品を専門に置く店があるけど、みんなお気に入りの店を持っているんです。日本には少ししか輸入されていないから、スイス人は美味しいラクレットチーズを見つけるのにとても苦労しますね」

 デニーさんの話を聞いているうちにラクレットチーズが溶けてきたようだ。チーズの芳醇な香りが辺りを漂いはじめる。「チーズの溶け具合は目と耳で確認して。グツグツと音を立てて、表面にツブツブが出るくらい溶けた時が一番美味しいから」。

6人用のラクレットグリル
横にある穴に金属製の専用ヘラを入れて、上から熱をあててチーズを溶かす仕組みだ。下から熱すると焦げて風味が損なわれるので熱は上からが基本。付け合わせにはさっぱりとしたピクルスが合う