フィヨルドが深く刻まれた険しくも美しい北欧の海。白夜に照らされて輝く幻想的な世界を旅する。

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フィヨルドの絶景 ノルウェーの海岸を行く

フィヨルドが深く刻まれた険しくも美しい北欧の海。白夜に照らされて輝く幻想的な世界を旅する。

文=バーリン・クリンケンボルグ
写真=オルショヤ・ハールベリ、エアレン・ハールベリ

 フィヨルドに次ぐフィヨルド。スカンディナビア半島の西岸をふちどるノルウェーの海岸線は、おそらく地球上でも群を抜いて複雑に入り組んでいる。海岸線の総延長を計算し直すプロジェクトに取り組んだノルウェーの地理学者たちは、3年がかりで2011年にようやく計算を終えたほどだ。

 新しい技術と、より精密な地図を使い、以前は計算に含まれていなかった無数の島を追加したところ、海岸線は1万7700キロほど延びて約10万1000キロになった。
 もしノルウェーのフィヨルドと湾、島の海岸線をハンマーでたたいて、1本の線にしたら、地球を2周半する計算になる。それだけの長さが、南北1800キロ足らずの国土に収まっているのだ。

 フィヨルドで最長とされるソグネフィヨルドは、内陸に200キロ以上も入り込み、水深が1300メートルに達するところもある。海の深さはさまざまで、海辺の町のすぐ目の前が水深100メートルもあるかと思えば、本土から離れたロフォーテン諸島周辺のように、どこまでいっても数メートルの浅い海もある。

 ノルウェー海の地図には、陸地に沿って強い北向きの海流が描かれている。メキシコ湾流の延長を流れ、比較的水温が高いこの海流のおかげで、北緯70度の土地にも人が暮らせる。

 地図上にはまっすぐな矢印で描かれていても、実際の海流は、速度や方向を絶えず激しく変えている。
 昔ながらの木製のボートで漂流しようものなら、波の上に顔をのぞかせた岩場に衝突するか、巨大なフィヨルドの入り口付近に散らばる小島の間を永遠にさまようことになるかもしれない。外海へ出ようとボートを走らせても、ロフォーテン諸島の南側に発生する渦に巻き込まれ、引き戻されるのが関の山だ。

 だが、ひとたび沖合に出れば、ロアル・アムンセンをはじめとするノルウェーの探検家たちが、海に親近感を抱いたのも納得がいく。沖合を航行する船のデッキから見る北部の沿岸は、9世紀末にノルウェーの航海者オッタルがバレンツ海を目指した頃とほとんど変わっていないように見える。

 オッタルはこの荒涼とした土地を「無住の地」と呼んだが、サーミの人々は昔も今もここで変わらぬ暮らしを送っている。陸地に近づき、トロムソ港の穏やかな水面を眺めれば、丘陵地帯が壁のように立ちはだかり、荒らぶる海から守ってくれていることを実感できるはずだ。
 この国では誰もが漁師のように海を知り尽くしていると思うかもしれないが、ほとんどのノルウェー人にとって、陸もまた身近な存在であり、陸と海、どちらにも愛着を抱いているのだ。

※ナショナル ジオグラフィック11月号から一部抜粋したものです。

編集者から

 ノルウェーを訪れたのは、もう15年も前のこと。「白夜」を初めて体験し、白々とした空を夜中の3時に「ほ~」と眺めていたのを思い出します。仕事がなければ、3日くらいぶっ続けで起きていましたね、絶対。こうした夏の日を毎年迎えるノルウェーの人たちは、どうやって時間の感覚を保っているのでしょう? この特集にはそのヒントが隠されていました。凛とした空気感が伝わる写真も必見ですよ。(編集H.O)

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