イスラム教徒が多い北部で頻発する襲撃事件。黒幕とされる組織「ボコ・ハラム」とは何者なのか。謎の組織の実態と、混迷を極める国の現状に迫る。

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ナイジェリアの混迷

イスラム教徒が多い北部で頻発する襲撃事件。黒幕とされる組織「ボコ・ハラム」とは何者なのか。謎の組織の実態と、混迷を極める国の現状に迫る。

文=ジェームズ・ベリーニ/写真=エド・カシ

 ナイジェリア政府の公式な見解によると、「ボコ・ハラム」はテロ組織である。ナイジェリア北部出身のイスラム教指導者モハメド・ユスフが、現体制からの分離独立を目指して結成した。

 ボコ・ハラムとは西アフリカのハウサ語とアラビア語を組み合わせた言葉で、西洋式(非イスラム)の教えを禁じるという意味だ。2009年、モハメド・ユスフが殺害されると(ナイジェリア警察に処刑されたとする見方が強い)、彼の支持者たちは報復を誓った。

 9.11の米国同時多発テロから12年たつが、暴力をいとわないイスラム過激派と、彼らが引き起こす紛争は後を絶たない。そのあおりを現在まともに食らっているのが、アフリカ大陸だ。サハラ砂漠の南に広がるサヘル地域では、イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)や、ジハード主義者など、いくつかの過激派組織が活動している。なかでも新興勢力のボコ・ハラムは、暴力的な集団として悪名高い。

 イスラム国家の樹立を求めるボコ・ハラムは、キリスト教徒だけでなく、裏切り者と見なしたイスラム教徒も容赦なく殺す。2009年以来、ナイジェリアではボコ・ハラム関連の事件で4700人以上が死亡したとみられている。
 1億7000万人が暮らすナイジェリアは、アフリカ大陸で最も人口が多く(アフリカ人の6人に1人はナイジェリア人だ)、サハラ砂漠以南で第2の経済規模を誇る大国だ。たとえそうだとしても、ボコ・ハラムが関与した虐殺の犠牲者はあまりに多い。

 最近、ナイジェリア人の間では、ボコ・ハラムという名前が単なるテロ組織以上の意味を持ち始め、一種の忌み言葉と化している。
 ボコ・ハラムに目をつけられ、殺されることを恐れた人々はその名を口にしなくなった。代わりに「危機」や「不安」といった言葉で言い換えている。
「隣人でさえ信用できません。誰がボコ・ハラムか、わからないからです」と、ナイジェリア第2の都市・カノのある社会活動家は言った。

 一方、福音主義キリスト教を信仰するナイジェリア大統領グッドラック・ジョナサンは、ボコ・ハラムの反乱は終末の予兆ではないかと公言してはばからない。

 中部カドゥナ州のアタカルは、大量虐殺が起きたとされる丘陵地帯だ。虐殺はボコ・ハラムの犯行で、殺されたのはキリスト教徒ばかりだとされている。
「すべては北部をイスラム化するためですよ。やつらはキリスト教徒を根絶やしにしたいんです」と、ある高官は語った。

 別の村でも、アタカ族のキリスト教徒が襲われた。襲撃はイスラム教徒のフラニ族の仕業だと、ある男性は断言する。隣人も同じ意見だった。さらに、犯人はボコ・ハラムかもしれないと二人は言ったが、なぜこんな田舎の村を襲うのかと尋ねても、答えられなかった。
「人々はボコ・ハラムが犯人だと思いたいんですよ」と、地元の人道支援関係者は言う。

 いつ誰に襲われるかわからないナイジェリア北部では、憶測が事実にすり替わってしまう。人々は不安のあまり、すべての暴力はボコ・ハラムの仕業だと思い込もうとするのだ。

※ナショナル ジオグラフィック11月号から一部抜粋したものです。

編集者から

 2007年2月号「豊かな原油に蝕まれるナイジェリア」以来、6年ぶりのナイジェリア特集です。前回は原油が産出する南部の話がメインだったのに対し、今回は原油の出ない北部の話。イスラム過激派ボコ・ハラムが大きく取り上げられていますが、この国の問題はひと言で説明できないほど複雑です。撮影を担当したのは前回と同じエド・カシ。当時、「これまで仕事をした中で、ナイジェリアは一番大変な国だった」と語っていますが、暴力事件が相次ぐ北部の取材も、相当な危険を伴ったはずだと思います。(編集M.N)

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