「まさに楽園だ」。17年前にパプアニューギニア東部のキンベ湾を訪れたとき、写真家のデュビレはそう感じたという。しかし、今回の撮影は地獄でしかなかった。荒天で水中の視界は3メートルしかなく、数台のカメラが壊れたうえ、取材を手伝う妻がマラリアで倒れて、撮影は遅れに遅れた。そんななか、雨がやんだわずかな隙に撮れたのが、この写真だ。

――ダニエル・ストーン

レンズの裏側

――この魚、チカメタカサゴのどこに惹かれましたか?

デュビレ:泳いでいくと、体の色が銀色から鮮やかなオレンジ、そして赤へと変わっていくのです。まるで絵画のようでした。色だけでなく、何も怖がらずに泳ぐ様子にも魅了されました。群れが私のたった数センチ前を泳ぐんです。この魚の魅力に取りつかれた私は、同じ海域に何度も潜りました。

――取材をあきらめようと思ったこともあったそうですね。

 ええ。撮影の下見で、見たこともないほど大きく育った扇状のサンゴがある美しい場所を見つけていました。しかし、本番は雨のために視界が最悪。目の前にある被写体すら見えない状況で、腹が立ち、どうしていいかわからず、落ち込みました。取材に失敗することは、自分にとって一大事です。別案が必要でした。

――どうしたのですか?

 それほど遠くない沖合にあるサンゴ礁で潜りました。水深が深いので、撮影時間が短くなるのですが、ようやく美しい光景に出合えましたよ。