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今年5月31日、ナショジオ誌でもおなじみの竜巻追跡の第一人者ティム・サマラスが、米国オクラホマ州の竜巻で死亡した。慎重だった男に何が起きたのか。

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巨大竜巻との死闘

今年5月31日、ナショジオ誌でもおなじみの竜巻追跡の第一人者ティム・サマラスが、米国オクラホマ州の竜巻で死亡した。慎重だった男に何が起きたのか。

文=ロバート・ドレイパー

 日本でもたびたび観測され、ときに甚大な被害をもたらす竜巻。そんな自然の脅威を追いかける男たちが北米にいる。竜巻追跡人、ストームチェイサーだ。

 彼らはやみくもにスリルを求めたり、科学の名を借りてヒーロー気取りで無謀な冒険を企てたりする無鉄砲な輩ではない。

 とりわけティム・サマラスは、有名な竜巻追跡人かつ発明家で、ナショナル ジオグラフィック協会の支援研究者でもあり、慎重の上にも慎重を期すことで知られていた。
 彼が10年にわたって取り組んできたのは、竜巻の進路に「プローブ」と呼ばれる観測装置を置く手法だ。大きな危険を伴うが、サマラスはリスクを最小限にしようと努め、観測装置を素早く設置する練習を繰り返した。

 チームのメンバーの命を守るため、気象パターンを綿密に調べ、いざという時の避難ルートもいくつか想定しておくのが常だった。それでも道路状態が悪かったり、豪雨に視界を閉ざされて竜巻の進路を見極められないときは、ためらわずに追跡を打ち切った。

 「彼が『だめだ、危険すぎる』と言って、追跡をやめたことが何度あったかわかりません」と、サマラスの追跡チーム「ツイステックス」の一員であるトニー・ローバックは言う。「じれったいと思うこともありました。『大丈夫、行けますよ』と、よく抗議したものです。でも、彼はとても慎重でした」

 サマラスの慎重さは追跡人たちが認める事実だ。
 それを踏まえると、5月31日に彼を襲った悲劇は、納得がいかない。

 「ワトンガの南で嵐が発生。危険な一日の始まりだ。天候の変化を賢く読め」
 2013年5月31日、これがサマラスによるツイッターへの最後の投稿となった。

 サマラスの遺体はその夜、追跡チームの車の助手席から見つかった。
 遺品のノートパソコンは小川で見つかり、遺体が発見された後も数日間、所持品の捜索が続けられた。

 完璧なプロでも、致命的なミスを犯すということか。それともオクラホマ州エルリーノを襲った竜巻は、どんなに慎重な読みも裏切るような怪物だったのか。

 調査が進んでも、疑問のいくつかは解明されないだろう。そもそも竜巻自体にも多くの謎が残っている。
 過去40年余り、観測機器の進歩に伴い、スーパーセル(竜巻をもたらすことのある巨大積乱雲)を継続的に観測する技術も向上してきた。気象学者の藤田哲也が開発した「フジタスケール」と、それを改良した「改良フジタスケール」を使って、竜巻の破壊力を事後に評価することもできる。
 それでも、竜巻研究の権威ハワード・ブルースタインが言うように、「どのスーパーセルが竜巻を生むのかを見極める決め手は、わかっていない」のだ。

※ナショナル ジオグラフィック11月号から一部抜粋したものです。

編集者から

 特集の写真や地図を見ていて、竜巻追跡は米国の平原地帯でないとできないことだと感じました。人家がほとんどなく、道路はまっすぐで交通量も少なく、いざというときの逃げ道を十分確保できるからこそ、ストームチェイサーが集まってくるのでしょう。日本の場合は、人も車も多く、避難路も限られるので、安全を確保できませんし、住民の避難の邪魔にもなります。サマラスの死を教訓に、安全な調査手法が開発されることを願っています。
 日本版では、防衛大学校の小林文明教授に、日本の竜巻の実態について解説していただきました。こちらもぜひお読みください。(編集T.F)

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