第62話 どんと一生懸命! 厳冬&酷暑の鉄則

 すると彼女は、
「あのね、マイナス何10℃にもなるような世界で、一生懸命にやっちゃダメなのよ!」
 と、先ほどよりも力をこめて言う。

「いやいやいや……」

 私は、自分の顔の前で大きく手を横に振った。

 北国の人というのは、どんなに厳しい寒さにも負けないで、懸命に生きているものだ。

 その厳しい自然環境の中では、手を抜いたり、テキトーな仕事をしたりすると、それが命取りになることもあるので、彼らは常に真面目で働き者だ。

 だから私は、厳寒の北の人たちが好きなのだ。

 それなのに、北の大地に生まれ育ったトーニャが、こともあろうか、
「この極寒の世界で生きていくにはね、一生懸命にやらないことが、コツなのよ」と言う。

 マイナス40℃の中でも、汗だくになって働いて、「今日もがんばった~」と爽やか気分一杯の私には、トーニャの脳みその中を疑いたくなるような言葉だった。

 ところがトーニャは、ぽつりと言う。

「汗かくと、死ぬよ……」

「へ?」

 な、なんと!

 人生汗だくになることなど数え切れないほどあるのに、「死」を突きつけられるなんて……。