ワトソンキノボリネズミ(哺乳類:ネズミ目:キヌゲネズミ科)のこども
A juvenile Watson's climbing rat, Tylomys watsoni
著者の手のひらで寝ている。柔らかく長い毛が密集していて、ふわふわだ。(写真クリックで拡大)

 ただし、寝床の周辺に糞はなく、保管していた食糧を荒らされている形跡もまったくない。いったい何を食べているのだろう?

 翌日、捕まえたネズミたちを外へ放す際、1匹に餌となりそうなものを与えてみた。蛾、キノコ、果実・・・いろいろ試していると、ノボタンの熟れた果実の汁をなめた。
 なめ終わると、お腹がいっぱいになって眠くなったのか、ぼくの手のひらの上でうとうとし始めた。

着生植物の上を跳ねるように駆けまわる。(写真クリックで拡大)

 木の幹の枝分かれしているところに置いてやると、目を覚まし、そこに生えていたコケを少しかじっていた。地面や木の幹を行き来する様子を写真に収めていると、やがて鼻をクンクンさせて、ぼくによじ登ってきた。

 幹にまた置いて、駆け回る様子などを写真に収めていると、またぼくに登ってくる。肩に登り、頭に登り、帽子の上に乗り・・・。しばらく一緒の時間を過ごしたのだった。

 これを書いている今現在も、屋根裏や壁の間から、かすかで甲高い「キー、キー」というワトソンキノボリネズミの鳴き声や、ガサゴソと動き回る音が聞こえてくる。けれど、あの愛らしさを見せられてからは、「こうなったら、もう一緒に住んでもええわ~」という気持ちで日々過ごせるようになった。

肩から腕に移動して、ツーショット。(写真クリックで拡大)
地面を駆けまわったり、木の幹を登ったり降りたりした後、戻って来て著者のズボンを登っているところ。(写真クリックで拡大)
西田賢司

西田賢司(にしだ けんじ)

1972年、大阪府生まれ。中学卒業後に米国へ渡り、大学で生物学を専攻する。1998年からコスタリカ大学で蝶や蛾の生態を主に研究。昆虫を見つける目のよさに定評があり、東南アジアやオーストラリア、中南米での調査も依頼される。現在は、コスタリカの大学や世界各国の研究機関から依頼を受けて、昆虫の調査やプロジェクトに携わっている。第5回「モンベル・チャレンジ・アワード」受賞。著書に『わっ! ヘンな虫 探検昆虫学者の珍虫ファイル』(徳間書店)など。
本人のホームページはhttp://www.kenjinishida.net/jp/indexjp.html

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