第10回 パラグアイの子供が最初に覚える料理とは

 コーンスターチにチーズ、卵などを入れてつくるこの料理は、正確には「ソパ・パラグアージャ」という。ソパがスペイン語で「スープ」を意味するように、昔、料理人がスープをつくろうとして誤って煮詰めてしまい、固形になったものを味見したら美味しかったことから、つくられるようになったとか。

 実際のソパはふわふわの生地からチーズがとろりと溶け出していて、口に入れると崩れるほどやわらかい。チーズの塩気が先にくるが、舌に残るのは乳製品のやさしい甘み。「パラグアイのコーンスターチでないとこのふんわり感は出ないんです」と、コーンスターチを祖国から取り寄せているというグラディスさん。中米が原産と言われ、5000年前から栽培されているトウモロコシもまたマンジョカ同様によく食べられている。

 「パラグアイの女の子は12~13歳になると母親と一緒にキッチンに立って料理を覚えます。そうやって母の味を受け継いでいくんですが、最初に覚えるのがこのチパとソパ。私の母親は去年亡くなりました。でも、こうやってキッチンに立ってチパやソパをつくっていると母のことが身近に感じられます」

 グラディスさんはそう言って、パラグアイの国民的飲料テレレ(マテ茶)を出してくれた。「私には娘がいないので日本に来てからはずっと一人で料理してきたけど、お店を開くことになったら貴雄が料理を覚えるって言ってくれて。料理を教えていると私もつい厳しく言ってしまうので息子とケンカすることも多いですが、我が家の味を継いでくれると思うとやっぱり嬉しいですね」

 実は、店を開くまでパラグアイに行ったことがなく、料理もあまり食べなかったという貴雄さん。

スープを煮詰めたのが始まりと言われるソパだが、実際はオーブンで焼き上げる。材料はコーンスターチ、チーズ、タマネギ、卵、塩、バター、牛乳。ふんわりと焼くのは腕次第
グラディスさんが振る舞ってくれた、見た目は揚げ餃子にそっくりなエンパナーダ。これもパラグアイでは人気だという。牛挽き肉と卵、パセリ、ピーマン、パプリカを塩コショウとクミンで味付けた一品
こちらがマテ茶。モチノキ科のマテの葉や枝を乾燥させて粉砕、精製したもので強い苦みが特徴。水出しにすると苦みが少なくさっぱりと飲める。マテ茶は鉄分やカルシウム、ビタミンAとBを多く含んでいることから「飲むサラダ」と言われている。肉食で野菜をほとんど食べないパラグアイ人の貴重な栄養素となっている