第10回 パラグアイの子供が最初に覚える料理とは
虫の音が聞こえ始めた9月の半ば、私は生まれ育った地、東京・江東区に立っていた。とはいえ、自身のソウルフードを求めてやってきたわけではない。有明の東京ビッグサイトで「JATA旅博2013」なるものが開催されていると聞いたからだ。
自国の自然や文化などを広くPRするこのイベントには、154の国と地域から大使館や観光局、航空会社、旅行会社などが参加。のべ13万人以上の来場者で賑わったという。かくいう私も、まだ見ぬ新たな国のソウルフードとの出会いを期待して、13万人のうちの一人として足を踏み入れたのだ。
会場内はアジアやヨーロッパ、アフリカなどの地域に分かれ、その中に国ごとのブースが並んでいる。中・南米ゾーンを訪れた私は、パラグアイブースで振る舞われていた一口サイズの食べ物をひとつもらった。見た目はパンのようだが、もちもちとしていてチーズの味があとを引く。これは何かと尋ねると、ブースのスタッフはにっこり笑って教えてくれた。
「チパといって、パラグアイ人の大好物なんです」
パラグアイでは毎日といっていいほど食べられているという、このチパ。スタッフによると、日本でも珍しいパラグアイ料理店がつくったもので、その店は今回の旅博にも出店しているそうだ。
口に残るチパの風味に引き寄せられるように、人混みをかき分けてフードコートにやってくると、パラグアイ料理店「ユウキレストラン」の屋台には現地の人だと思われる彫りの深い顔をした青年が店番をしていた。パラグアイってスペイン語だよな……と曖昧ながらも「ブエナス・タルデス!」と声をかける。
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