第19回 アリューシャン列島の無人島探検記

 ぼくはガラクタを集めて作った自分の寝床の上に、やはり格納庫のそこいらから持ってきた頑丈そうなドアを斜めに立てかけ、その中にもぐりこむようにして寝た。というのも強い風の振動で時折天井からいろんなものが落ちてきたりするからだった。上を向いて寝ているときに顔の上になにか大きなものが落ちてきたらそれで終わりである。

 予定通り撮影仕事が進み、やがてガイさんの飛行機が迎えに来る日になった。時間ははっきり決めていなかった。決めても定期便ではないから天候次第ではたしてその通り飛んでこられるかどうかまるでわからなかったから、着陸できないほど極端に天候が荒れたら、荒天がおさまるまでは帰還は無理である。その日はもう何もやることはなかったので、帰る荷物を整理し寒さを防ぐために焚火に当たっていた。みんなでいろんなことをしゃべりあっていたが、あいかわらずごんごん激しく吹き付ける風の音の中で時おり全員で同時に沈黙してしまうことがあった。それは誰もがみんな遠くから聞こえてくるのではないかという飛行機の爆音に注意していたからで、そのことがわかったときには全員揃って大笑いした。やはりみんな予定通り帰れることをどこかで強く願っていたのだ。

 ありがたいことにその日、素人目にも飛行機の着陸が難しいというほどの突風は吹かず、遅い午後にきちんとガイさんの飛行機が飛んできた。無事に着陸。気の利いたパイロットで、飛行機の中によく冷えた缶ビールが1ダース積まれていた。もう我々の酒在庫の中には缶ビールはとうの昔に切れていたのだ。

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つづく

椎名誠(しいな まこと)

1944年、東京生まれ。作家。『本の雑誌』初代編集長、写真家、映画監督としても活躍。『犬の系譜』で吉川英治文学新人賞、『アド・バード』で日本SF大賞を受賞。近著の『わしらは怪しい雑魚釣り隊 エピソード3 マグロなんかが釣れちゃった篇』(マガジン・マガジン)、『そらをみてますないてます』(文藝春秋)、『足のカカトをかじるイヌ』(本の雑誌社)、『どーしてこんなにうまいんだあ!』(マキノ出版)、『ガス燈酒場によろしく』(文藝春秋)ほか、著書多数。公式インターネットミュージアム「椎名誠 旅する文学館」はhttp://www.shiina-tabi-bungakukan.com/