第19回 アリューシャン列島の無人島探検記

 このようにして我々は探検隊なのか当初から避難民なのかよくわからない状態になりつつも、滞在中行動できる日を見つけて島の要所要所の撮影をした。動力で動くものは何もないから全員徒歩で行くしかない。水はもともと持っていかず島の湧水を利用していたが、原爆実験のあとの細かい検査は行われていなかったから、持って行ったガイガーカウンターは場所によっていろいろ反応が違い、できるだけ線量の低い、しかも流れている水を利用するようにした。

 この島にはその昔アレウト族というネイティブが住んでいて、彼らの住居跡もところどころで見つけた。縦穴を掘って上に流木を使ったらしい屋根の柱を何本か並べ、細かい木の枝をびっしりしばりつけるという造りで、ほとんどモグラのような生活だったことがわかる。記録を読むと、彼らの主食は海からとれるアイナメの何種類かと陸からとれるユリ根。時おり捕獲することができるラッコぐらいのものだったらしい。

 我々の食料はコールドベイから買っていった肉のカンヅメやパスタ類だった。あわてて買ったものだから油がなかったり調味料がへんに偏っていたりで、出発時のどろなわ状態が残念だった。格納庫の中での生活は毎日焚火ができるので全員火を囲み、偏っているとはいっても食料と、そしてぼくが強烈に主張したビールやウイスキー類などが潤沢だったので、格納庫が本当にひしゃげて倒れるようなことがない限りは気分としても快適だった。ただ、常に吹きつける風の音がすさまじく、時おり巨大な格納庫のどこか高い天井あたりが強い風にそっくりはがされていくような音も聞こえた。

格納庫の中の我々の騒々しくも快適なホームレス的キャンプ。(撮影:椎名誠)(写真クリックで拡大)