ピッコロにとっても大迷惑である。
ヒートしようと思ってヒートしたわけでもなく、この季節が訪れれば来る、これまたごく自然のサイクルであり、体のシステムなのだから、どうしようもない。
「いきなり、そんなこと言われても、あたい、心の準備が……。でも、私をこんなに取り合うなんて~、あたい、幸せ……」
などと思ったかどうかは知らないが、トーニャにとっては急ぐ道のりで、いきなりの恋騒動。
心ここに無いような、一心乱れまくっているオス犬たちを率いて走らなければならなくなったのだから、想像するだけで大変だ。
それでもトーニャは、前進をやめなかった。
まだ、たいして距離を走っていないのだから、そのときに引き返していれば、暗闇と極寒のなかで疲労困憊するほどの目に遭わなくても済んだのに。
そして、彼女は2つ目のミスを犯してしまったのである。