第60話 激しい恋の告白で、危うく遭難!

前回まで:日没寸前に犬橇を出したトーニャの犬だけが家に戻ってきた。不審に思ってトムとペニーに捜索を依頼したところ、5時間後に遭難しかかっているところを発見された。経験豊富なトーニャだが、2つのミスを犯してしまったという。

 ペニーさんとの電話で、ときどき受話器の向こう側から聞こえてくるトーニャの声は、いつも豪快に生きている彼女とは思えないほどに弱々しく、か細かった。

「疲れて体を起こしているのもつらいわ……、だから寝るね……」

 そう聞こえてきた声に、私は、よほど大変な状況だったのだろうと想像した。

 ペニーさんの言う2つのミスとは、全くもってトーニャらしくない初歩的なものだったという。

 ユーコンクエスト犬橇レースの最年少完走記録を持っているトーニャには、比較的若い世代ながら、ベテランのマッシャーたちに、1歩も引けを取らないくらいの経験と知識がある。

 そんな彼女であるから、私には少々信じられない思いだった。

 実はハプニングは、ロッジを出発して湖に出てすぐのことだった。

 走っていた犬たちが、突然に列を乱して飛びかかったり、ケンカをしたりして、しまいにはラインが絡まり合って、たちまち走行不能に陥ってしまったのだ。

 お互いのラインで締め付け合っている団子状態の犬たちを解くために、トーニャは、一旦、犬たちをラインから外すことにした。

 そのときに放れてしまった2匹が、ドッグヤードに戻ってきていたのである。

 原因は、ピッコロというメス犬のヒート(発情)だった。