チョウノスケソウの花畑(写真クリックで拡大)

 小屋への帰路、東ブレッガー氷河と山には、少し低くなった太陽からの光でくっきりとした陰影が刻まれていました。その光景があまりにも美し過ぎて、たまらず涙が滲んでしまいました。たいして眩しくもないのにサングラスをかけてこっそりと隠したのは言うまでもありません。そして私はそれまでの悪天候続きなど忘れて、本当に来てよかったと心から思い、また翌日からの調査を頑張ろうと誓うのでした。

 北極と南極。それぞれの野外調査の持ち物で一つだけ全く違うものがあります。北極でしか持たないもの・・・それはライフルです。南極では人間を襲うような野生動物はいませんが、ここ北極にはホッキョクグマがいます。残念ながら(?)私は野外でホッキョクグマに出会ったことはまだありませんが、今ここで現れたら一巻の終わりだろうなぁ・・・と想像して震えることがあります。

 ここ5年ほどで、村にホッキョクグマが出没することが格段に多くなったという話をよく聞きます。前回来たときは、1カ月の滞在中に3回ほど出没情報が流れてきましたが、今回は平均して数日おきに流れてきます。北極に何か異変が起きていることを感じずにはいられません。

2009年4月号「氷の楽園 スバールバル諸島」(画像クリックで特集ページへ)

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