特別編 田邊優貴子「北緯79度なう! 後編」

提灯のような花を咲かせるタカネマンテマ(写真クリックで拡大)

 南極の中でも、昭和基地のある大陸性南極(ざっと分けると、南極半島ではないエリアのこと)では、今のところ地球温暖化の影響が確認されていません。けれど、南極半島ではその影響が現れはじめ、さらに北極ではとても顕著に現れていると言われています。実際に、ここニーオルスンの私たちの調査地にある東ブレッガー氷河は最近急激に後退しています(下の写真)。

 温暖化は、植物の侵入と定着の過程に変化をもたらす可能性があります。原因は、それぞれの植物の温度に対する応答の違いから来る直接的な変化の場合もあれば、氷河の後退スピードが増加することで植物それぞれの侵入速度の違いから来る変化の場合もあるはずです。

 裸地への植物の侵入と定着メカニズムという純粋な学問的問題に迫ることがもちろん第一にあります。けれど、そのメカニズムが明らかになることで、それをベースとして環境変動に対して植物や生態系がこれからどう応答していくのかを知るべく、予測を立てやすくなります。こうやって、今どんなことが起きているのか、これからどうなっていくのかを学問的な根拠によって提示できれば、環境問題に対して方策を考えていくことにもつながっていくのです。

東ブレッガー氷河の後退(上が2001年7月、下が2013年7月)(Photograph by Ayaka W. Kishimoto-Mo, Masaki Uchida)(写真クリックで拡大)