第59話 まさかの遭難? いったい何が起こってるの?
前回まで:湖の向かいの集落に行くため、日没寸前に犬橇を出したトーニャの犬のカーメルがなぜか戻ってきた。背中には橇を引くハーネスが付けられたままだ。首を傾げていると、ウロウロしている影がもうひとつ。あれ???
ウロウロしているその影に、「こっちに来なさい!」と叫ぶと、やはり素直に私のところに走ってきた。
暗闇の中から見えてきた顔は、オスの老犬、スタンピーだった。
歳をとっているだけあって、優秀なベテラン組の犬である。
カーメル同様に、背中にはハーネスが付けられたままだった。
トーニャと共に走っていった犬が帰ってきた……、これはいったい、どういうことだろう?
2匹の犬たちの顔を見ても、言葉を話すことができないから、もちろん、何があったのかなど伝えてはくれない。
私はふと思った。
トーニャの身に何かが起こり、それを知らせるために、2匹を放したのでは?と。
私はとりあえず、背中のハーネスを外してやり、ドッグヤードに犬たちを繋ぐと、さっそくロッジに戻って、トーニャの向かい先のトゥリッサの家に電話をかけることにした。
しかし、私にはその家の電話番号が分からなかった。