第9回 スリランカ美女も目がない、ホッパーとは!?

 発酵が必要なのはパンと同じだけれど、米粉を使うのは米が主食である国だからこそか。紅茶のイメージが強いスリランカだが、農作物の生産量は米がもっとも多く、年間387万トンと紅茶33万トンの10倍以上にあたる(FAO 2011年統計)。ホッパーのほかにも、米粉を麺状にして蒸した「ストリング・ホッパー」などさまざまな食べ方があるという。

 「米の種類もたくさんあります。ホッパーにはラトゥキャクルハール(赤い米)を使うことが多いですね。ビタミンB群が豊富で健康にもいいんですよ。一度、日本のお米でつくってみましたが、ねっとりしてしまって上手に焼けなかったので、ラトゥキャクルハールの粉を取り寄せてつくります」

 ココナッツもまた大切だとアジットさんは言う。ココナッツが実るココヤシは熱帯アジアからオセアニアに広く分布し、スリランカでは紅茶、ゴムとならぶプランテーション作物として発展した。現在でも米に続く生産量を誇り、主要な輸出品のひとつでもある。かの亀の子束子もスリランカのココナッツの繊維が使われているそうだ。

 「スリランカではホッパーだけでなく、カレーやお菓子など多くの料理にココナッツが使われています。油や酢もつくるし、繊維は束子に、ココヤシの葉は屋根に利用される。スリランカ人にとって欠かせないものなんです。都市部以外の家はどこも庭にココヤシの木があるんですよ。私も母親に持ってきてと言われると、庭にいってもいでいた。そんなフレッシュなココナッツは他では食べられません」

 ココヤシの酒にしても日本では手に入らないから重曹で発酵させているというが、そうすると独特の酸味が出ないらしい。「日本で本物のホッパーをつくるのは難しい」とアジットさんはさみしく笑う。そのためセイロンインでもメニューにはないが、希望が多いので材料がそろう時のみ出しているという。

ホッパーはカレーと一緒に食べることもあるが、「カッタサンボ」と呼ばれるタマネギ、モルディブフィッシュ、唐辛子やライムなどを混ぜたものをつけて食べるのが定番。辛さが強いがさっぱりとしてココナッツの甘みと相性がよい
真ん中に卵を落とした「エッグ・ホッパー」。塩コショウで味付けされた半熟卵をつけるようにして食べる