人気のある動物を見せるべきか、絶滅危惧種の保護に重点的に取り組むべきか。動物園は今、大きな岐路に立たされている。

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[保護する/PROTECT]動物園はノアの箱舟

人気のある動物を見せるべきか、絶滅危惧種の保護に重点的に取り組むべきか。動物園は今、大きな岐路に立たされている。

文=エリザベス・コルバート/写真=ジョエル・サートレイ

 2100年までに、地球上の生物種の半分が絶滅の危機を迎えるおそれがある。
 野生動物の生息地が失われるにつれて、動物園はますます現代版のノアの箱舟のような役割を果たすようになっている。多くの野生動物が絶滅に追い込まれつつある今、動物園は彼らが生き残るための、最後の避難所になろうとしているのだ。

 動物園の原型と言えるものは数千年前からあった。古代エジプトの数少ない女性ファラオ、ハトシェプストは紀元前15世紀にサルやヒョウやキリンを飼育する小規模な動物園を運営させていたという。

 とはいえ、現在のような動物園が誕生したのは近代になってからだ。米国では1859年、初の動物園協会がペンシルベニア州フィラデルフィアで発足。その目的は、当時人気だったサーカスの動物ショーや町の小さな動物園よりも大規模で、教育もできる動物園を設立することだった。

「種の保存」と集客力、どちらを優先すべきか

 米国の動物園は草創期から種の保存に取り組んできた。アメリカバイソンやクロアシイタチ、カリフォルニアコンドルなど、動物園のおかげで絶滅を免れた成功例はあるものの、種の保存を行うには動物園の経営基盤が安定している必要がある。保護の必要な動物が、必ずしも集客力のある人気者とは限らないのが頭の痛いところだ。

 シカゴ動物園協会の保全生物学者ロバート・レイシーによると、動物園は今後、何を優先すべきか、非常に困難な決断を迫られるという。

 「人気のある大型動物を少数だけ飼育するか、それとも、小さな生き物たちの保護に力を入れるのか。小さな動物は人々の関心を引きにくい傾向がありますが、大きな動物を飼育するのと同じ資金ではるかに多くの種を救えます」

 一方、動物園はその役割を根本的に見直すべき時期を迎えつつあると主張する人々もいる。21世紀に入ってますます状況が悪化している以上、さしあたり保護の必要がない動物まで飼う意味があるのか疑問だというのだ。

 「一般の人々が見たがっているから、というのは、責任逃れのように聞こえます」と、オニー・バイヤーズは語る。彼は国際自然保護連合(IUCN)の種の保存委員会の一部門、「野生生物保全繁殖専門家グループ」の議長だ。

 「非常に多くの動物種が、動物園の提供できるノウハウを必要としています。保護を必要としない動物の飼育から徐々に手を引き、空いたスペースで保護の必要な動物を飼育する、という流れになってくれるといいのですが」

 動物園が飼育下での繁殖に力を入れているおかげで、どうにか絶滅を免れている動物が現に存在する。

※ナショナル ジオグラフィック10月号から一部抜粋したものです。

編集者から

 パンダやライオンは人気があるけれど、両生類は集客力が乏しい――こうした状況は日本でも同じでしょう。大きな動物を飼育するには、広いスペースだけでなく、餌代や設備維持費などの負担も大きくなります。動物園が現代版のノアの箱舟になれるかどうかについては、動物園に足を運ぶ側の私たちにも責任があると感じました。(編集M.N)

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