世界各地の氷河が驚くほどの速さで解けている。定点観測で記録した100万枚の写真が、気候変動の動かぬ証拠だ。

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[証明する/PROVE]氷河融解

世界各地の氷河が驚くほどの速さで解けている。定点観測で記録した100万枚の写真が、気候変動の動かぬ証拠だ。

文=ロバート・クンジグ/写真=ジェームズ・バローグ

 写真家ジェームズ・バローグは、世界の氷河を撮り続けている。その目的は、地球の気候が本当に変化しているのを、写真の力で証明することだ。

 2007年に、調査プロジェクト「エクストリーム・アイス・サーベイ」を開始。太陽電池で作動するカメラを25台、グリーンランドとアイスランド、アラスカ、アルプス山脈、ロッキー山脈の氷河の近くに設置した。日中は30分ごとにシャッターが切れるように設定し、氷河の変化を記録する。こうして撮影した100万枚近い写真を見れば、氷河の融解が疑う余地のない事実だとわかる。
 プロジェクトは現在も続行中で、対象を南米や南極にまで広げている。気候変動は、私たちが直視しなければならない現実なのだ。

 かつて人間は氷河を恐れていた。ところが19世紀後半には観光名所となり、スイスにあるローヌ氷河では毎夏、ホテル・ベルヴェデーレ近くにトンネルが掘られて氷河の内部に入れるようになった。人間はその頃すでに、氷河を消滅させてしまうような世界を作り始めていた。しかし、氷河はまだ生きている。

 氷河は息をする。氷河の上流に積もった雪が氷になり、末端部の近くで解ける。
 「氷河は冬に息を吸って、夏に吐き出します」と話すのは、スイスにあるフリブール大学の氷河学者マティアス・フス。8月にローヌ川を流れる水の4分の1が、氷河の解けた水だという。

氷河の数が6分の1に減った国立公園

 氷河は動く。自らの重さに耐えられなくなると、氷自体が流動する。
 「動いていないものは、氷河とは呼べません」と話すダン・フェイグリは、気候変動を研究する生態学者。米国モンタナ州のグレイシャー国立公園で、この20年間働いてきた。現在、公園内には氷河が25個あるが、100年前は150個もあったという。その多くが地図に載る前に消えてしまった。

 今から2万年前の氷河期、スイスは氷の海に覆われ、アルプス山脈の峰々だけが凍った海面から突き出ていた。そして19世紀、小氷期と呼ばれる寒冷な時代の終わり頃にも、氷河はまだ健在だった。ローヌ氷河を撮った1849年の銀板写真を見ると、氷河の末端部が現在より500メートルほど標高の低いところまで達していたのがわかる。
 スイスの科学者たちは、山の高い地点に氷河が通った痕跡があるのを見て、過去に大氷河期があったことに気づいた。私たちはこうして、地球の気候が大きく変化しうると知ったのだ。

 もし人間が地球の気候を変えることなく、自然に委ねるとすれば、1000年か2000年のうちに氷河期が再び訪れるだろう。逆に私たち人間が、地下にある石炭や石油や天然ガスを燃やし尽くせば、地球上の氷は残らず解ける。
 氷河は私たちが、重要な分岐点にいることを思い出させてくれる。

 アルプス山脈にかつて存在した氷の半分が、20世紀までに解けてしまった。これはスイスの湖をすべて満たすほどの量だ。地球に残る氷の8割から9割が2100年までになくなるだろうと、氷河学者のフスは予測している。
 ローヌ氷河は山の上方に後退して、渓谷からは見えなくなった。フスは言う。「夏の終わりに雪が全部解けて、すっかり小さくなった氷河を見ると、つらい気持ちになりますよ」

※ナショナル ジオグラフィック10月号から一部抜粋したものです。

編集者から

 写真家ジェームズ・バローグが取り組んでいる氷河調査プロジェクト「エクストリーム・アイス・サーベイ(EIS)」は、目で見ることが難しい地球温暖化の実態を、写真というツールを利用して見えるようにしています。具体的には、世界各地の氷河にカメラを設置して、タイムラプスで撮影、氷が解けていく様子を記録するのです。
 今月号に掲載したアラスカ州のコロンビア氷河の写真は衝撃的でした。2006年と2012年のコロンビア氷河の状態は、目を疑うほど。たった6年間で、氷河が3キロも後退してしまい、氷に覆われていた海面があらわになっています。このプロジェクトの写真は、地球温暖化の動かぬ証拠です。(編集S.O)

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