紛争による死者が500万人を超すアフリカ・コンゴ。東部の鉱山で採掘される金やレアメタルが武装勢力の資金源になっている。

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[目撃する/WITNESS]暴力が支配するコンゴの鉱山

紛争による死者が500万人を超すアフリカ・コンゴ。東部の鉱山で採掘される金やレアメタルが武装勢力の資金源になっている。

文=ジェフリー・ゲトルマン/写真=マーカス・ブリーズデール

 アフリカ大陸のサハラ砂漠以南で最大の国土を有するコンゴ民主共和国。
 ダイヤモンド、金、コバルト、銅、スズ、タンタルなど、埋蔵資源の規模は数百兆円とも数千兆円とも言われる。だが、そんな数字はあまり意味をもたない。長引く内戦により、今のコンゴは世界で最も貧しく、深刻な痛手を負った国となっている。

 なかでも武装集団が実効支配する東部の鉱山は、電子機器や宝飾品の世界的メーカーに希少な鉱物を供給すると同時に、この国を混乱に陥れている。あなたのノートパソコンやカメラ、あるいは金のネックレスには、微量ながら、コンゴの苦悩が含まれているかもしれないのだ。

 コンゴの惨状を理解するには、ベルギー国王レオポルド2世がアフリカ中部の広大な土地を私領化した、100年以上前の植民地時代に立ち戻る必要がある。国王の目当てはゴムと象牙。今も続く、強欲で容赦ない資源搾取の始まりだ。
 ところが、1960年にベルギーが突然コンゴの独立を承認したため国内は大混乱に陥り、野心を抱く若い軍人モブツ・セセ・セコが権力を握った。

 そんなモブツにも権力の座を追われる日が来る。そして、彼と一緒に国も崩れ落ちることとなった。そのきっかけとなったのが、1994年に隣国のルワンダで起きた大虐殺だ。ツチ族など約100万人が犠牲となり、加害者側のフツ族は多くがコンゴ東部に逃げ込んだ。

 ルワンダはウガンダと手を組み、1997年にコンゴに侵攻してモブツ政権を崩壊させた。これが第一次コンゴ戦争だ。ルワンダとウガンダは両国の息のかかったローラン・カビラを新大統領に据えたものの、彼の対応に不満をもち、再び侵攻を開始する。この第二次コンゴ戦争は、チャド、ナミビア、アンゴラ、ブルンジ、スーダン、ジンバブエも介入したことから、第一次アフリカ大戦とも呼ばれている。

「紛争鉱物」に群がる諸勢力

 戦乱の無秩序状態に乗じて、他国の軍隊や反乱グループが何百という鉱山を占拠した。ダイヤモンド、金、スズなどの鉱物は、またとない資金源となる。これがいわゆる「紛争鉱物」だ。

 2000年代に入ると、国際世論の高まりを受けて外国軍はコンゴから撤退したが、後には荒廃した国土が残された。
 コンゴ東部は今も紛争地帯だ。ウガンダ、ルワンダ、ブルンジがさまざまな反乱グループの後ろ盾につき、鉱物資源の収益で武器を供与したり、民兵に報酬を支払ったりしている。国際社会はそんな現状を厳しく非難するものの、誰も有効な対策を打ち出せずにいた。

 ところが、2010年7月21日、米国でドッド=フランク法が成立した。
 この法律には紛争鉱物に関して特別に規定が設けられ、米国の上場企業は、自社製品に使用する鉱物が、コンゴ国内および周辺の武装集団が支配する鉱山に由来するかどうかを開示しなければならない。法律では紛争鉱物の使用禁止までは明確に定めていないが、多くの大企業は、世界最悪の人道被害が起きている国と結びつけられることを嫌がる。

 ドッド=フランク法によってコンゴ産のすべての鉱物がボイコットされ、かえって労働者の生活が脅かされるのではないか。そんな批判もある。法律の成立直後には実際、紛争の資金源でないことを証明できない業者から、多国籍企業がスズやタンタルを買わなくなった。さらに2010年9月には、コンゴ政府が東部での採掘と取引を半年間完全に禁じたため、何千人もの鉱山労働者が路頭に迷う事態となった。

 しかし、鉱物取引の新しい形が芽生え始める。コンゴ当局が鉱山の立ち入り検査を開始したのだ。居座っていた民兵や傭兵はコンゴ軍によって一掃され、代わりに訓練を受けた鉱山警察が監視に当たるようになった。

※ナショナル ジオグラフィック10月号から一部抜粋したものです。

編集者から

 9月号の「キンシャサ」に続く、コンゴ民主共和国の特集第2弾です。写真家ブリーズデールのカメラがとらえた、鉱山に強制徴用された児童労働者や、戦うことを教え込まれた少年兵。どちらにも明るい未来はありません。このまま大きくなってしまうのでしょうか。せめて彼らに、別の世界を見せてあげたいと願わずにはいられません。(編集H.O)

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