第58話 孤独で傷だらけの女戦士……?

 トーニャの日課は、聖書を読むことからはじまる。

 マッキンリーがどーんと見える大きな窓辺のカウチに寝る彼女は、体を少し起こすと、ちらりちらりとマッキンリーの姿を眺めながら、聖書の1編を呟く。

 普段はハツラツとしていて、豪快で元気のいいトーニャだけれど、ときどき淋しそうな表情をしては聖書を開く姿が、私は少し気になっていた。

 あるとき彼女は、ふと、こう言ったことがある。

「私は橇犬たちと共に、自然の中で暮らしたいという夢を実現したけれど、その夢を選んだことによって、失ったものも多い……」

 それは、友達や家族との距離や女性としての幸せのことだろうと私は想像した。

 まだ独身の彼女にとって、奥深い森の中で暮らすのは、1人で生きていく覚悟が必要だったのだ。

 どこかうつむき加減の彼女に、私は言った。

「日本も同じよ。女性が1人で夢を追うということは、少なかれ何かしらの犠牲を必要とする……」

 と言う私も、思えば、たくさんの犠牲を払ってきた……と思う。