日本の大学で経済学を学ぶアユールザナさん。モンゴルの将来を背負う若者だ

 モンゴルでは1990年の民主化以降、急速な経済発展を遂げる中で遊牧の暮らしをやめて都市に流入する人が増えている。都市部にはいろいろな国のレストランもあるし、マクドナルドもできて、若者を中心に食文化が変わってきているという。チンゲルトさんと同じく「シリンゴル」で働く、モンゴルの首都ウランバートル出身の留学生・アユールザナさんは言う。

 「僕たちの世代はスーテー茶よりジュースが好きだし、野菜も食べます。市場では羊の肉が一番高いから、チャンサンマハはお正月やお祝いのときに食べる特別な料理。よく食べるのは羊の肉とジャガイモが入ったうどんです。だからモンゴルでは羊の肉そのものをそれほど食べたいと思いません」

 でも、とアユールザナさんは最後にこう付け加えた。「日本にいるとやっぱり羊の肉が恋しくなります」。かつての日本がそうであったように、転換期を迎えているモンゴルでは、これからも食生活はどんどん変わっていくのだろう。だが、ご飯粒一粒と同様、羊の肉への感謝の念は親から子へと受け継がれていくに違いない。

シリンゴルは日本にモンゴル料理がほとんど紹介されていなかった1995年にオープン。店名はチンゲルトさんの故郷であり、草原の美しさで知られる内モンゴル自治区のシリンゴル地方が由来

モンゴル料理店 シリンゴル
東京都文京区千石4-11-9
電話:03-5978-3837
ホームページ:http://shilingol.web.fc2.com

中川明紀(なかがわ あき)

講談社で書籍、隔月誌、週刊誌の編集に携わったのち、2013年よりライターとして活動をスタート。何事も経験がモットーで暇さえあれば国内外を歩いて回る。思い出の味はスリランカで現地の友人と出かけたピクニックのお弁当とおばあちゃんのお雑煮

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