「ドンッ」と目の前に置かれたのは茹でた肉の塊。
胸椎の部分だろうか、幼児のこぶし大の骨にぎっしりと肉がくっついている。

 9月15日から始まる大相撲秋場所の番付表を見たのがきっかけだった。日本人力士、遠藤が初土俵から昭和以降最速で新入幕を果たしたことが話題になっているが、注目してしまうのはやはり横綱。東に4連覇を狙う白鵬、西には日馬富士と、横綱は東西ともにモンゴル人だ。

 モンゴル勢が相撲界を席巻して久しいが、なぜそんなに強いのだろう。もしかしたら、ソウルフードにも強さの秘密があるのかもしれない。そう考えてモンゴル人力士がよく食べにくるという、東京・文京区のモンゴル料理店「シリンゴル」を訪れた。

 シリンゴルは日本人の田尻啓太さんが店長を務める。シェフとして料理に腕を振るうのは中国の内モンゴル自治区で育ち、少年期までは遊牧生活を送っていたというモンゴル族のチンゲルトさんだ。

 「日本にいても食べたくなる地元のソウルフードは何ですか?たとえば口にしただけで故郷の景色がパーッと蘇るような……」

 カウンターで準備を進めるチンゲルトさんに質問をぶつける。ちょっと考えてから「これしかないね」と言って出してくれたのが、冒頭の肉の塊だった。

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