第18回 雪の峠越え パタゴニア馬の旅(2)

 その夜は吹雪になった。そして夜更けに馬たちはプーマ(アメリカライオン)に襲われ、2頭がやられた。1頭の馬はぼくを乗せてきて壁の迷い道で進退極まっていた灰色の馬であった。やりきれない気持ちだった。明けがた、窓から吹雪の外をずっと見ているピエールの後ろ姿の写真を少し迷った後1枚だけ撮った。

 翌日はやはり雪。長いマントを着て馬に乗ってフランス氷河まで行った。風が強くなっており、雪も吹き飛ばされていた。パイネ近くの、氷河によって削りとられ、垂直の壁になった岩山の道を長い時間をかけてすすんだ。風が雲を激しいいきおいでその垂直岩のむこうを飛んでおり、風景はますます激しく素晴らしくなっていった。

フランス氷河をへだてる山から雲が発生。まるで噴火している山のように見える。(撮影:椎名誠)(写真クリックで拡大)

つづく

椎名誠(しいな まこと)

1944年、東京生まれ。作家。『本の雑誌』初代編集長、写真家、映画監督としても活躍。『犬の系譜』で吉川英治文学新人賞、『アド・バード』で日本SF大賞を受賞。近著の『わしらは怪しい雑魚釣り隊 エピソード3 マグロなんかが釣れちゃった篇』(マガジン・マガジン)、『そらをみてますないてます』(文藝春秋)、『足のカカトをかじるイヌ』(本の雑誌社)、『どーしてこんなにうまいんだあ!』(マキノ出版)、『ガス燈酒場によろしく』(文藝春秋)ほか、著書多数。公式インターネットミュージアム「椎名誠 旅する文学館」はhttp://www.shiina-tabi-bungakukan.com/