第18回 雪の峠越え パタゴニア馬の旅(2)

 それから15年して、ぼくはまたこのカルク牧場に行った。途中のセロカステーヨの集落も15年前と同じ人口100人だった。ひとつだけ変わったのは食堂に宿泊設備ができたことで4人まで泊まれる。それから以前ぼくが泊めてもらった寄宿舎つきの学校はそのときは学校が始まっていて、生徒が戻っていた。生徒たちは、みんなこの周辺の牧場で働く家族の子供らだった。可愛く愛想がよかった。校長はぼくたちに生徒たちと同じ給食を出してくれた。

 カルク牧場にいくと、まず牧場主に挨拶する。3年前に先代の息子の若い経営者に変わっていた。ぼくは忘れていたがその若い経営者はぼくが15年前に訪ねたときのことを覚えていて「あのときの羊焼き肉パーティでテンガロンハットでワインを飲んだのは自分です」と笑いながら言っていた。嬉しそうだった。

 このときも宿舎はガウチョと一緒だった。前来たときよりもさらに汚く臭くなっているようだった。聞けば、最近のパタゴニアの羊は供給過剰で毛皮や肉の相場はさがっていて、この牧場も景気が悪いという。先代の経営者は息子に牧場を譲ってプンタアレナスに越してしまって会えなかった。15年のあいだにこの大きな大地もいろいろ変化が起きていたのだった。

 このときは2日だけカルク牧場に世話になり、いったんセロカステーヨに戻り、そこから馬でパイネの近くのフランス氷河を見にいくのが大きな目的だった。