第58回 信州の昆虫たちに大流行の装いは?

ベニヒラタムシ(甲虫目:ヒラタムシ科)。菅平高原で撮影した。(写真クリックで拡大)

 雨が降り、大阪は急に涼しくなった。夏の驚異的な暑さが去るとともに、ぼくはコスタリカに向けて再び日本を去ることになった。

 電車とバスを乗り継いで、伊丹空港へ向かう。車内では、ほぼみんな、うつむいて携帯電話やスマホの画面を読んでいるようだ。 

 ぼくは、窓の外の遠くの景色、山の尾根や空に浮かぶ雲をしばらく眺めては、また車内の様子を観察している。これは自然な目の運動になって良い。視力が落ちては、小さな昆虫たちを見つけることは、難しくなる。

 空港で出発を待っている間、あっという間だった日本の夏の想い出が、頭の中を駆け巡る。長野や東京、兵庫に和歌山、各地域で昆虫採集・観察をした。そこで出会った人たち、虫たちのこと、地元の小中学の同窓会、そして友人や母との別れ。

 今回は、長野県の菅平高原と峰の原高原で撮影した想い出のひとかけらをご覧いただきたい。大阪の下界では見られないものばかり。信州の高原は、下界の暑さと隔絶されているという点で、どこかコスタリカのモンテベルデに似ている。でもそこには、コスタリカの自然とまた違う、そこに似合った生きものたちがすんでいる。

 そういえばコスタリカは雨季の終りに近づいてきているから緑が濃くなってるはず。虫たちは元気にしてるんかな~? 家の中は湿気でカビだらけになってるかも……。

黒い体に赤い翅! そんな配色のさまざまな甲虫たちが同じ環境で目立って見られた。左上からカタクリハムシ5.5 mm、ニホンベニコメツキ12 mm、カクムネベニボタル(オス)8 mm、左下ベニヒラタムシ12 mm、ベニボタル14 mm、オオクシヒゲベニボタル(オス)12 mm。擬態し合っているのだろう。筑波大学菅平高原実験センター菌学研究室の大沢和広さんの標本をお借りして撮影した。撮影場所:菅平高原(写真クリックで拡大)
ハンノアオカミキリEutetrapha chrysochloris chrysochloris(甲虫目:カミキリムシ科:フトカミキリ亜科)。本州の近畿から東と北海道に分布する。
体長:15 mm 撮影場所:峰の原高原(写真クリックで拡大)

 ブナの葉の表の脈に沿って何かがくっついている。

 実はこれ、虫こぶ。貝殻のような形から「ブナカイガラフシ」と呼ばれる。

大きさは2 mm。中にはブナカイガラタマバエの幼虫がそれぞれ一匹ずつ住んでいる。ちなみに葉の裏にもよく似た虫こぶができていることがあるのだが、裏と表で虫こぶの形成者が違うこともある。
撮影場所:菅平高原