「だから……すぐに、ここで写真を撮り始めたら良い。このまわりは私の私有地だ。森も湖もある。動物もいる。すきなだけ写真を撮れば良い。そして、たまにきみが撮った写真をいっしょに見て、話をしようじゃないか。それで、どうかな?」
ぼくは、それが、どんなにすばらしいことか、すぐに理解しました。
オオカミも暮らすジムの土地で、写真を撮り始めることができる。
そして、たまにその成果をジムに見てもらえる。
アドバイスだって聞かせてくれるかもしれない。
本音を言えば、アシスタントとなって、数年はジムの近くで写真にまつわる仕事を覚えたかった。
しかし、それが叶わないと分かったいま、ジムの提案は、細やかな心遣いにあふれた、現実的に考えうる最良の答えだと思いました。
もし弟子入り出来たとしても、結局いつかは、自分で、自分なりの写真を撮りはじめなくてはならないのです。
ぼくは笑顔で答えました。
「はい、ここで写真をとっても良いのであれば、とても嬉しいです。ぜひ、そうさせてください。忙しくないときでかまいませんので、ぼくの撮った写真を見てください……」
そうと決まれば、話はこれからのことになりました。