地球温暖化がもたらすのは気温上昇だけではない。海面上昇がもたらす、地球の危うい未来をあぶり出した。

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加速する海面上昇

地球温暖化がもたらすのは気温上昇だけではない。海面上昇がもたらす、地球の危うい未来をあぶり出した。

文=ティム・フォルジャー/写真=ジョージ・スタインメッツ

 今年5月、大気中の二酸化炭素(CO2)濃度は、過去300万年の間で最高の400ppmに達した。着々と進行する地球温暖化。その影響は、暑くなることだけではない。海面がこれまでより速いペースで上昇する。そこにパワフルな異常気象が重なると、被害は計り知れないものになる。

 この秋、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、新しい報告書を発表する準備を進めている。IPCCが6年前に発表した報告書では、今世紀末までに海面は最高で58センチ上昇する可能性があるとされた。だがこの報告書では、氷床が解けて海に流れ込むペースが速まる可能性については、メカニズムが十分に解明されていないという理由で、意図的に予測から外された。

氷床が解けると海面は2メートル上昇する?

 今秋の報告書では、海面上昇の予測は前回よりもやや高い数値に修正される模様だが、氷床の融解の仕組みは依然として解明されていない。だが1992年以降、グリーンランドと南極大陸を合わせて、毎年およそ200立方キロメートル余りの氷が失われてきたと、専門家は見ている。つまり、年間2000億トンほどの氷が解けているということだ。2100年までには、海面は少なくとも今より1メートル上昇するとの見方が今では有力だが、この数字でさえ控えめすぎるかもしれない。

 「ここ数年の観測で、グリーンランドと西南極(南極大陸の西半球にある地域)の氷床の解け方が速まっていることが確認されています」と、ニューヨーク市にあるコロンビア大学地球研究所の研究員ラドリー・ホートンは話す。「心配なのは、このまま加速し続ければ、21世紀末までに、地球全体で海面が1.8メートルも上昇する可能性があることです」

 米海洋大気庁(NOAA)が設置した専門家による検討委員会は昨年、2100年までに起こり得る四つのシナリオを検討し、海面が最大で2メートル上昇する可能性があると発表した。堤防の設計や監理などを担う米陸軍工兵隊は、1.5メートルの海面上昇を想定した都市計画を推奨している。

 海面の上昇が続けば、海抜の低い地域が水没するばかりか、高潮で浸水が予想される危険区域も広がる。こうした脅威は深刻になる一方だ。これまで100年に一度しか起きなかった超大型の嵐が、今世紀末までには10年に一度のペースで発生するようになるかもしれない。経済協力開発機構(OECD)は、海面の上昇を0.5メートルと控えめに想定したうえで、2070年までに世界の主要な港湾都市の住民1億5000万人と、世界の総生産の9%に当たる35兆ドル(3500兆円)の資産が洪水の危険にさらされると警告した。

 人類はすでに取り返しがつかないほど地球環境を改変し、より暑く、より海面の高い地球を未来の世代に引き渡そうとしている。日本列島の形が変わり、見知らぬ惑星のように変わり果てた地球。化石燃料に依存した人類の文明がもたらしつつある地球の未来は、まさにそんな姿なのである。

※ナショナル ジオグラフィック9月号から一部抜粋したものです。

編集者から

 私の実家は川のそばにあるので、子どもの頃は大きな台風が来ると、よく床下あたりまで浸水しました。水が迫ってくると、家族総出で大事なものを2階に運び上げたものです。
 このように昔から水害に遭ってきたせいか、今回の特集で取り上げたハリケーン「サンディ」による甚大な被害を見ると、とても他人事とは思えません。実家のある地域では河川改修が進み、ここ30年くらいは洪水が起きていませんが、100年後も大丈夫かどうかはわかりません。じわじわと進む海面上昇に対して、どう立ち向かうべきなのでしょうか。特集では、オランダでその答えを探りました。(編集T.F)

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