第54話 若葉ちゃんは、まだまだ認められない!

 そこに来て人生の全てが犬橇というトーニャは、自分で走る道は、自分でブレークアウトをしている。

 スノーモービルを使うこともあるが、橇犬たちの先頭を歩いて、道を示しながら橇の跡をつけるのだそうだ。

 犬橇たちが右や左へ曲がるのも、この跡を探してフォローをするからである。

「ジー」の掛け声と共に、スムーズに曲がっていったトーニャたちを遠くに見て、私は、よし、私もジーと指示を出すぞ!と、張り切って声をあげた。

「ジー、ジー」

 速やかに、犬たちが曲がっていった。 

 しかし、なんだか気分が悪いのである。

 と言うのも、犬たちは、私の指示など聞いていない感じなのだ。

 トーニャのチームが右に曲がったのだから、どうせこっちだろう。という感じが、ひしひしと犬たちの背中から伝わってきて、

「そうね……、私のことは、まだマッシャーとして、認められないよね……。犬橇若葉マークなんだから……」
 と、私は落ち込んでしまった。

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つづく

廣川まさき

廣川まさき(ひろかわ まさき)

ノンフィクションライター。1972年富山県生まれ。岐阜女子大学卒。2003年、アラスカ・ユーコン川約1500キロを単独カヌーで下り、その旅を記録した著書『ウーマンアローン』で2004年第2回開高健ノンフィクション賞を受賞。近著は『私の名はナルヴァルック』(集英社)。Webナショジオでのこれまでの連載は「今日も牧場にすったもんだの風が吹く」公式サイトhttp://web.hirokawamasaki.com/