第54話 若葉ちゃんは、まだまだ認められない!

 実は、犬橇というのは、犬が走りやすいように、最初から道を付けておく必要がある。

 積雪が浅いうちや、まだ雪が柔らかいうちに、スノーモービルで走っておいて、跡をつけておくのだ。

 それを、ブレークアウトと言う。道を開くという意味だ。

 例えば、有名な犬橇レースでも、レース前に道を開くためにスノーモービルでコースを走る人がいて、実はこれが、犬橇よりも過酷な作業だと言われている。

 厳冬を極める環境のなかでは、エンジンなど信用できないし、スノーモービルは鉄の塊のように重いので、スタックするとこれまた大変。雪の中から鉄の塊を掘り出さなければならないのだ。

 それに、凍った湖や川の上では、氷が割れて落ちてしまうこともある。

 スノーモービルの場合は、落ちたら完全にアウト。

 過去に、死者も出ているのである。

 犬橇に比べると、スノーモービルの方が遭難リスクが高く、トラブルからの回復も難しい。

 長時間の乗り心地も悪く、体力消耗も激しい。

 だから、ユーコンクエストなどの犬橇レースに参加する人たちを、「過酷なレースに参加する英雄」と賞賛する人も多いが、本当は、ブレークアウトをする人たちのほうが、よほど過酷で命を懸けているのだ。

 裏事情を知る人たちにとっては、彼らこそが英雄なのだ。