第54話 若葉ちゃんは、まだまだ認められない!

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 私の指示も聞かないままに、いきなりトーニャのチームを追いかけるように発進した私の橇犬たちは、猛烈なスピードで駆けはじめた。

 まだ心の準備も出来ていないので、私は必死に橇につかまった。

 橇から落ちて、橇と犬だけが行ってしまった……、ということだけは、絶対にイヤだ。

 そんなのは、みじめと言うより、かっこ悪い。

 この道は、ミンチュミナ湖に向かう林の中で、2、3回のカーブのあと、まっすぐ下りていく坂になっている。

 下りの勢いがついて、橇はまるで暴走列車のように滑っている。

 慌てて、雪面に食い込むように作られているフットブレーキを踏んでスピードを殺そうとするが、先頭が体の大きな黒熊ルーディーと、細身だけれど体格のいいズートなので、ブレーキが雪面を削るだけでまったく役に立たない。

 あわわと慌てていると、だんだん下り坂が急になってきて、恐怖感にもかられはじめた。

 もはや勢いのついた橇は、前の犬たちを追い越してしまいそうである。

 追い越すとは、いわゆる犬たちを轢いてしまうことだ。

 犬橇では、よくあるアクシデントだ。

 それで腰骨などを骨折して、安楽死させたという話も聞いたことがある。

 この橇には荷物を積んでいないから重量が軽く、私の体重もさほど重くないので、橇が弾んでしまって、吹っ飛びそうになっている。

 必死にブレーキをかけて橇の勢いを殺すと、今度は目の前に、結構ビビッてしまうような落差が現れた。