バラードがタイタニックを探せる期間は、実はわずか2週間足らずでした。短い期間で見つけたほうがインパクトも大きかったはず。なのに、なぜそんなウソをついたのでしょうか。

 理由は海軍との密約でした。

 深海生物はたまたま見つけたことを前回書きましたが、タイタニック号はそれとは対照的。小さい頃はジュール・ヴェルヌの『海底二万マイル』のネモ船長に憧れていたバラードにとって、タイタニック号を見つけることは長年の夢でした。

 でも、タイタニック号の探索には莫大な費用がかかります。バラードは資金集めから始めなければなりませんでした。おまけに、ほかにもタイタニック号を探そうとする夢追い人(主に大金持ち)が何人かいたために、彼はあせっていました。当時の心境を彼はこんなふうに語っています。

「技術や船、潜水艇が必要でした。まるでシンデレラです。夜中までに何とかして、靴、ドレス、馬車、御者を借りてこないとカボチャになってしまうという(笑)。時間がない切迫感に襲われていました」( DVD『タイタニック』より

 そこでバラードは米海軍に支援するよう話を持ちかけます。最初は正面突破をしてニベもなく断られるものの、彼がある取り引きをもちかけると、もし任務をこなして時間が余ればタイタニック号を探していいと海軍は内諾します。

 その任務とは、1960年代に沈んだ2隻の原子力潜水艦、スレッシャー号とスコーピオン号の発見でした。

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