第17回 命がけの乗馬訓練 パタゴニア馬の旅(1)

 鞍にしがみつくようにしてなんとか揺れる鐙に片方の足先がかかったとき、ぼくの馬はすでに坂道をかなりのスピードで走っていた。馬というのは自分の仲間の馬のあとに自動的にくっついていく習性がある。そのため馬をあやつれなくても落ちずにいるかぎり、馬の走る速度で坂道を登っていけるのだ。 

 ぼくははじめのうちは落ちないようにしているのがせいいっぱいで、いったい何が起きて、何のために走っているのかまるで分からなかった。

 無我夢中というやつだ。

 やがて不思議な偶然でぼくはもう片方の鐙に足先が入ったのを知った。両方の鐙に足先が入ったのだ。それまでは体が斜めになっていて非常に危なっかしい態勢だった。

 鞍にしがみついているだけの態勢をなんとかたてなおし、先をいくガウチョのように鞍の上に腰を落ちつけ、たづなを握りしめた。要するに普通に馬に乗る姿勢にもっていったのだ。

 その頃になって全身の神経が復活したようで、背後で何かタダナラヌ音がしているのに気がついた。けれどそれがなんの音なのか振り向いて確かめる余裕はない。崖道は緩い勾配で、かなり走ったように思ったが、まだそんなに高度をかせいでいるわけではないようだった。

 しかし、先をいくガウチョのリーダーが停止しないかぎり、そのまま全力で駆けるしかないということは感覚的にわかった。30分ほど走り続けて、斜面のなかのちょっとした平地に着いた。そこで全員が馬をとめた。気がつくと馬の鼻息がすさまじい。すぐに馬をとめてはいけないらしく狭い平地をみんなで輪になってゆっくり走る。そのあいだにガウチョたちが話をしている。笑顔が多かった。

 サントスが説明してくれた。