部屋の中は、たくさんの窓から届けられる、やわらかな間接光に満たされていました。

 頭は冴えているけれど、指先には、しびれるような感覚がありました。

 <目の前にいるこの人が……ジム・ブランデンバーグ……あのオオカミの写真を撮った人……>

 同席していたトムとジュディの存在が、これまで緩衝材となっていたのかもしれません。

 1対1で、面と向かいあうことで、憧れの人物との出会いを遂げたことを、改めて強く意識しました。

湖を泳ぎ終え、上陸するウッドランド・カリブー。体を震わせて水を切り、苔むした森の中へ消えていった。(写真クリックで拡大)

 これまでに『ナショナル ジオグラフィック』の表紙を幾度も飾り、世界中の人々の目を驚かせつづけてきた写真家です。

 しかし、その瞳は、ギラギラとしているどころか、凪いだ湖面のように、どこまでも穏やかでした。

 何かを捕まえてやろうというよりは、写るものすべてを受けとめようとするかのような、透徹とした視線なのです。

 ぼくがじっと黙っていると、ジムが話すきっかけを促してくれました。

「それで……手紙には何が書いてあったんだい?」

 ぼくは深呼吸をして、覚悟を決めると、話し始めました。

この連載の前回の
記事を見る

この連載の次の
記事を見る