第3回 あのルンバは「条件反射」だけで動いていた!

 飯田さんの研究室では、ロボットの研究をするにあたって、常に生物を意識する。

 生物がおそろしく「効率がよい」というのが1つの理由として挙げられたが、それは、エネルギー効率やら計算効率やらを、身体そのもののメカニズムによってクリアしているという事実に基づいているようだ。我々は、自分たちの行動が脳によって支配されていると考えがちだが、飯田さんの観点からは、「体に脳がついていっている」のである。

 このような発想の萌芽は、実はかなり古くからあるという。

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「アラン・チューリング、ジョン・フォン・ノイマンといったコンピュータを創った科学者も生物にすごく興味があって、例えば生物の生殖、つまり、自己増殖、自己組織化の研究をしました。20世紀前半です。でも、一番よく知られているのは、20世紀半ばに提唱されたサイバネティクスですかね。ノーバート・ウィーナーという科学者がいて、機械と生物の制御が結構似ているんじゃないかと橋をかけた。現在の制御工学につながる流れです」

 ここでいう「生物への興味」は、数学的な観点から生物をどうやって理解したらいいのかという点に集約されている。工学的な成果としても、コンピュータそのものの進展であったり、一般的な機械の制御について理解が進んだ(制御工学)。コンピュータは言わずもがなだが、制御工学は黒子として非常に重要で、我々が日常的に接している多くの機械、たとえば、自動車も、飛行機も、エアコンもすべて、その理論とノウハウによって支えられている。