第5回 あえて付けた「深海」の二文字
しかし、人間が陸上で生活していて、目にすることのできない深海の生きものを見ることは、自然を理解するうえで貴重な体験になるとは思っています。「おもしろい」でも「気持ち悪い」でも、何かのきっかけがなければ、その次の関心にはつながりません。
何かしら心を揺らすきっかけがあれば、そこから見えてくる自然、海の世界は限りない広さを持って迎えてくれます。
地球上にいかに多様な生きものがいるか、それらが互いに支えあって生きていることもわかるでしょうし、まぎれもなく人間もその一員であることが理解できるはずです。そんな世界へ、より多くの人を誘いたいというのが僕の思いです。
海と、そこに棲む生きものたちを気にかけてくれる人を、一人でも増やしたい。そのためのきっかけづくりを全力でやるのが、僕の使命だと思っています。
(おわり)
石垣幸二(いしがき こうじ)
1967年生まれ。静岡県下田市出身。2000 年に有限会社ブルーコーナーを設立。世界各国の水族館、博物館、研究室などに稀少な海洋生物を供給する仕事から「海の手配師」と呼ばれ、「情熱大陸」などのドキュメンタリー番組にも度々取り上げられる。2011年に沼津港深海水族館の館長に就任。著著に『深海生物~奇妙でたのしいいきものたち~』(笹倉出版社)など。
高橋盛男(たかはし もりお)
1957年、新潟県生まれ。フリーランスライター。自動車専門誌の編集を手がけたのちフリーライターに。JR東日本新幹線車内誌「トランヴェール」、プレジデント社「プレジデント」「プレジデントファミリー」などに執筆。