「申し訳ない、申し訳ない」
「そういうつもりはないんだけど……」

 そう言い訳しながらも、膝蹴りが何発も入って、ラインに繋がれたカーメルは、背中を丸めてシュンとなってしまった。

 そんな申し訳ないカーメルをおいて、フラックルを取りにいくと、この犬は大人しく、小柄でもあることから、片腕でなんとかなった。

 しかしながら、たった4匹の犬たちを連れて来るだけで、タップタップの大騒動なのだから、普段12頭立てを扱うトーニャは、やはり凄い。

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 犬たちを連れてくると、今度は、それぞれの犬にハーネスというものを付ける。

 これは橇を引くためのもので、肩から背中にかけて覆うように作られていて、重さが分散されるようになっている。

 このハーネスを付ける際に、最も注意しなければならないのが、犬の肩だ。

 前方上下にしか動かない犬の前脚関節の仕組みを理解せずに、子供にパンツでも履かせるように付けて、犬の肩を脱臼させてしまうことがよくあるのだという。

 橇には、ゲイラインと呼ばれる、橇を引くための太いロープがつけられていて、そのロープから枝分かれする細いラインに犬たちをポジション通りに並べて繋ぐ。

 犬たちは、普段触れることも、じゃれ合うこともできない距離でドッグヤードに繋がれているものだから、このときばかりは、「あ、どうも、今日はよろしく」とか、「あんた、前から好きだったのよ」「お、俺もだ」などとやっている。

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