ぴょんぴょん跳び歩きのカンガルー状態で連行されてきたルーディーを、固定ラインに繋ぐと、今度は首輪抜け大天才のズートを取りに行くことにした。

「ちゃんと、前足が宙に浮くまで首輪を掴み上げるのよ!」

 トーニャの太い声に、「OK!」と返事をすると、私は犬たちの元へと向かった。

 倉庫にあった防寒服を手当たりしだいに着込んで、しかも厳冬期用のドカ靴を履いているので、気分はすっかり大男である。

「犬の1匹や2匹、うりゃ~っと持ち上げてやるわい!」
 と、ズートの脱走防止のためにつけてある2つ首輪からチェーンを外し、ぐいっと首元を持ち上げた。

 ところがである。

 このズートは、これから走りに行くという喜びよりも、私に甘えたいらしく、体をくねくねさせては、スリスリ、スリスリと私に擦り寄ってくる。

 まるで絡みつく巨大ナメクジである。

 くねくね、くねくねと体をよじるものだから、またも私の腕はねじれてしまって、
「イ、テ、テ、テ」
 関節技をかけられて雪の上に倒れると、今度は顔中をべっちょべちょの舌で舐め回さられた。

 もともとズートの首輪抜け脱走は、人間に甘えたいからで、ここから逃げたいという訳ではない。

 人間が大好きで、頭を撫でられたいのだ。

 身悶えながら、首輪からねじれた手を引き抜くと、遠くから、
「はい、カンガルー!」
 と、トーニャの檄が飛んできた。

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