第6回 イギリスの食卓に欠かせないソースとは

 丁寧にすり潰し、バターとミルクがたっぷり入ったマッシュポテトはとってもクリーミー。タマネギなどの野菜を混ぜた挽き肉は、シンプルな味付けで、肉そのものの味が口の中に広がる。そして、その肉汁がポテトに染みこんでよりまろやかに……。素朴だが、幼い頃に洋食屋さんで食べたような、どこか懐かしさを感じる料理だ。

 とくに印象的だったのは挽き肉。なぜこんなにジュワッとして、うま味が豊かなのだろうかとガースさんに問うと、ちゃんと秘密がありました。

 「グレイビーが入っているんです。グレイビーは肉汁を使って作るソースのことで、ローストビーフはもちろん、イギリス料理の多くにこれがかかっていたり、入っていたりする。つまり、グレイビーが料理の味を決めると言っても過言ではないんです」

 グレイビーは肉を調理した際に出る肉汁に、小麦粉やワインを入れて作るのが基本だが、そのほかにもタマネギやニンニクを足したりと、その味は家庭によってさまざま。ガースさんのグレイビーはトマトペーストをはじめ、いろいろな野菜を入れて14時間かけてじっくり煮込む。そのグレイビーを挽き肉に混ぜることで、うま味が引き出されるのだという。

 「実は私の母の料理はあまり美味しくなかったんです。シェパーズパイも、食卓に出てくるとまたこれか~なんて思っていました(笑)。故郷はイングランド中部のコッツウォルズという町なんですが、のどかなところで当時はレストランもあまりなかった。だから大学に入ってロンドンに来たときに驚きましたよ。世の中には美味しい料理がたくさんあるんだって」

これがグレイビー。いろいろな素材が混じり合った繊細な風味だ。料理の味を引き立てる、日本でいう醤油のような存在だろうか
イギリスの家庭には必ずあるというHPソース。少し酸味があるスパイシーなソースで、これをシェパーズパイにかけるのがお決まりだとか
イギリスではジャガイモは主食のようなもの。マッシュポテトをはじめ、フライドポテト、ローストポテトと形はいろいろだがほぼ毎食、食卓にのる。ちなみに手前がHPソース、シェパーズパイにかかっているのがグレイビー