第6回 イギリスの食卓に欠かせないソースとは

日本に住んで約35年になるというガース・ロバーツさん。現在は、日本でイングリッシュビールを作る準備の最中だという

 「シェパーズパイです」

 表面にほどよい焼き色がついたその料理は香ばしさが食欲をそそるが……あれ?「パイ」なのにパイ生地がない。

 「上に盛られているのはマッシュポテト。シェパーズパイは牛か羊の挽き肉に、パイ生地の代わりにマッシュポテトをのせて焼く、イギリスの家庭料理なんです」

 ガースさんが教えてくれる。なるほど、取り分けてみると確かにマッシュポテトと挽き肉の2層になっている。シェパーズ(shepherd’s)が「羊飼いの」と訳されるように、本来は羊肉を使い、牛肉の場合はコテージパイ(Cottage=田舎の小さな家)というが、見た目は同じで現在はどちらも「シェパーズパイ」と呼ぶことが多いようだ。

 「イギリスにはサンデーカーベリー(サンデーロースト、サンデーランチとも)といって、日曜日の昼食にローストした肉をみんなで食べる習慣があります。でも、たくさん作るので肉が余ってしまう。イギリスの家庭ではどの地域でも、その肉をミンチにしてシェパーズパイを作り、翌日や翌々日に食べるんです」

 だからシェパーズパイを食べると、故郷の家や小さな頃のことを思い出すんですよ、とガースさんは笑う。イギリス人は食べ物を粗末にしないんだな、と感心しながらシェパーズパイをいただいてみる。

目黒タバーンのシェパーズパイは牛挽き肉。開店当初はラム肉があまり手に入らなかったこともあり、牛肉にしたという