――深海の生物をテーマにした水族館というアイデアは、石垣さんが出されたのですか。

 そうです。沼津は、交通の便が良いところではありません。それに、全国には110を数える水族館がある。やるなら、この地域にしかないもの、ここでしか表現できないもので、特色のある水族館にしたいという話を最初にしました。

 そのときには、私のなかにはすでに深海生物というキーワードがありました。

 静岡には富士山という日本一の山がある。一方では最深部で2500mという日本で一番深い駿河湾があります。その駿河湾の深海魚を海外に輸出してきていますから、この海の豊かさはよく知っているつもりです。しかも、深海生物をメインにした水族館は、世界的にもあまり類がありません。駿河湾と、そこに棲む生きものを生かさない手はないと思いました。

 しかし当初、地元の方々の反応は冷ややかでしたね。深海魚なんて暗くて気持ち悪いものを、わざわざ見に来る人がいるのかというわけです。地元の行政や有識者などからは年間7万人の集客程度と言われていました。

――しかし、現実に水族館ができてオープンしたら、年間の入館者数は24万人超。その成功の秘密と深海水族館にかける石垣さんの夢を、最後にうかがいましょう。

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(つづく)

石垣幸二(いしがき こうじ)

1967年生まれ。静岡県下田市出身。2000 年に有限会社ブルーコーナーを設立。世界各国の水族館、博物館、研究室などに稀少な海洋生物を供給する仕事から「海の手配師」と呼ばれ、「情熱大陸」などのドキュメンタリー番組にも度々取り上げられる。2011年に沼津港深海水族館の館長に就任。著著に『深海生物~奇妙でたのしいいきものたち~』(笹倉出版社)など。


高橋盛男(たかはし もりお)

1957年、新潟県生まれ。フリーランスライター。自動車専門誌の編集を手がけたのちフリーライターに。JR東日本新幹線車内誌「トランヴェール」、プレジデント社「プレジデント」「プレジデントファミリー」などに執筆。

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