第52話 基本はぴょんぴょんカンガルー跳び歩き

 捕まえようにも、重い防寒服を着込んでいるので走ることができず、私は再び、雪の上にへたり込んだ。

 そんな私を見て、トーニャが代わってルーディーを捕まえに行くと、
「犬はこう持つのよ」
 と教えてくれた。

 それは、犬の首輪を片手でぐいっと腰の辺りにまで持ち上げるのである。

 そうすると、犬の前足は地面から離れて自由が奪われ、犬たちは仕方なく、後ろ足で二足歩行するしかない。

 二足歩行と言っても、犬たちは人間のようには歩くことができないので、後ろ足でぴょんぴょんと跳ねて歩くことになるのだ。

 トーニャは、大きなルーディーの首を腰元で抱えながら、自前の太い声で言った。

「これよ! 橇犬の歩かせ方の基本は、このカンガルー跳び歩きなのよ!」

 私は思わず、吹き出しそうになったけれど、
「は、はい!先生。カンガルーですね、分かりました!」
 と大きな声で返した。

 そして、私の犬橇修行は、ぴょんぴょんカンガルー跳び歩きから、はじまったのである。

つづく

廣川まさき

廣川まさき(ひろかわ まさき)

ノンフィクションライター。1972年富山県生まれ。岐阜女子大学卒。2003年、アラスカ・ユーコン川約1500キロを単独カヌーで下り、その旅を記録した著書『ウーマンアローン』で2004年第2回開高健ノンフィクション賞を受賞。近著は『私の名はナルヴァルック』(集英社)。Webナショジオでのこれまでの連載は「今日も牧場にすったもんだの風が吹く」公式サイトhttp://web.hirokawamasaki.com/