第52話 基本はぴょんぴょんカンガルー跳び歩き

 例えば、セスナで運ばれてくる郵便物を取りに行ったり、集落の小さな図書館に本を返しに行ったり、お隣さんと言っても遠くにあるご近所さんに回覧板を届けに行ったりと、街に住んでいたら車を出して済ませるような用事を、ここでは犬橇が担う。

 まさに、生活の足。

 もちろん、まったく用事のない日もあるから、そういう日は何をするかというと、森の犬橇の道を橇で踏み固めに行く。

 犬橇の道は、森に住む罠師たちの重要な道でもあるし、緊急時のライフラインでもあるから、森の道の整備は、犬橇の重要な仕事の1つでもあるのだ。

 私はまだ、犬橇若葉マークなので、4頭立てからはじめることになった。

 普段12頭立てを操るベテランのトーニャも、今回は軽く慣らすだけなので、5頭立てで走る。

 犬橇には2種類の方法があって、簡単に説明をすると――、

 1つは、だだっぴろい氷原を走るために、犬を扇型に繋ぐエスキモーたちのやり方。

 これは、植村直己さんが北極圏を横断したときに使ったやり方だ。

 もう1つは、森の中の細いトレイルを走るために、犬を2頭ずつ直列に繋いで、まるで列車のごとく走らせるやり方。

 これは、西洋人たちが、森での純粋なスポーツとして改めて開発組織化したやり方で、今では世界各国の主流となり、犬橇レースなどで使われている。

 トーニャは、エスキモーではないし、この周辺は森が多いので、おのずと直列繋ぎのやり方だった。