しかし、バラードがはじめて参加した1975年のプロジェクトでは見つかりませんでした。このときのことを彼は、水深3000メートルの海底はまったく光の届かない暗闇の世界で、生命はほとんど存在しないが、海底火山はたくさん観察できたと説明しています。深海には生きものがほとんどいない。いるわけがない、と考えられていたことがわかります。

 有人潜水艇「アルビン」に乗って熱水噴出孔を発見したのはその2年後のこと。1977年2月17日でした。

 これが1977年10月号に掲載された“世紀の発見”のレポートです。

1977年10月号より(写真クリックで拡大)
1977年10月号より。左ページ下側の赤い生物はナマコの一種。(写真クリックで拡大)

 無人探査艇によるものも含め、これらの写真と動画はナショナル ジオグラフィックの支援により撮影したものでした。母船にはナショジオの現像所までありました。

 実はこのときバラードはアルビンに乗っていませんでしたが、チームの1人としてナショジオに文章を寄せ、こう締めくくっています。

「4万マイルもの海嶺にいったいどれだけ熱水噴出孔があるんだろう? ワクワクせずにはいられない。そのどれだけが生命を支えているのか? そして、その存在は暗黒の淵に息づく生命に関する知識を進化させるのだろうか?」

 バラードのこの疑問こそ、その後の深海生物研究の出発点でした。

つづく

(Web編集部S)

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