タイタニックや戦艦ビスマルク、空母ヨークシティなどを次々と発見して、いまは海洋考古学者や海洋探検家と呼ばれるロバート・バラードですが、そもそもは地質学者として深海の研究に関わりました。彼が中央海嶺の調査に参加したのは1975年。33歳のときです。

 生物学者ではないのかって? 違います。化学合成生物群集を探そうとしていたのではなかったあたりも、熱水噴出孔発見の面白いところ。つまり、ホントにホントに予想外の発見であり、完全な偶然だったのです。動画の最後にバラードが「生物学者に見せたかったんだ」と言っているのは、初回には生物学者が1人もいなかったためです。ちなみに、1979年の2度目からは生物学者も参加しました。

 彼がガラパゴス沖を調査していた70年代はプレートテクトニクスの黎明期。当時、ヒマラヤに貝殻の化石があるように、プレートが押し合いへし合い隆起して山になる証拠は見つかっていたものの、プレートが生まれる証拠は得られていませんでした。

 その有力な候補として、研究者たちが目をつけたのが「中央海嶺」でした。これは総延長約7万キロにもなる海底の山脈で、総面積では全地球の表面の約4分の1を占めます。活火山が1万以上もあり、プレートが生まれると考えられていた海底で盛んに活動しているので、どうやらここがアヤシイとにらんだわけです。

 そこで、地質学者たちは中央海嶺から枝分かれしている水深約3000メートルのガラパゴス沖の地溝帯に潜り、熱量を測定してみたところ、どう計算しても帳尻が合いません。これは熱がどこかから漏れているに違いない。いちばん理にかなうのは「温泉」だろうということで、熱水噴出孔探しが始まります。

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