――海外の水族館とのつきあいは、どのように始まったのですか。

 4年に1度開催される、世界水族館会議への出席がきっかけになりました。当時は渡航費用にも苦労する中で、子供の貯金を崩して航空券だけを買い、モナコで開催された会議に参加したことをよく覚えています。

 そのころは、魚だけでは生活がままならず、いろいろ仕事をしていました。けれども、このとき時に出会ったマイアミの海洋生物納入業者の言葉が、僕にある決意をさせました。

 この業者はボンネットヘッドシャークというサメを世界中の水族館に納入しているのですが、そのサメの飼育がうまくいかず、どの水族館でも1年以内に死んでいるという内容を、世界から集まっている400人ほどの水族館関係者を前に発表していました。当時の私には、彼のしていることが理解できませんでした。

 ボンネットヘッジシャークという高額なサメを納入できるのは、世界で彼しかいない。にもかかわらず、その当人が納入後の惨憺たる結果を、いわば顧客の前で発表するんですよ。僕にはその意図がわからなかったそこで、スピーチの後「あんなことを言って大丈夫なの?」と彼に聞きました。彼の答えはたった一言。「お前は何年この仕事をやるともりだ」と。

 恥ずかしくて、目の前が真っ白になったのを今でも覚えています。

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